リーグと選手との間には(Collective Bargaining Agreement:包括的労働協約、以下CBA)と呼ばれる合意事項が存在し、現行のCBAは2010-11シーズンまで効力を有しています。CBAにはサラリーキャップの他、最低、最大給与、トレード、ドラフト等の合意事項が含まれています。
NBAではチーム間の強さの格差を一定に抑え、リーグをよりエキサイティングにすることで、リーグ全体の収益を上げることを目的として、各チームが選手へ支払うサラリー(給料)の総量を一定以下に制限しています。この制限をサラリーキャップといいます。
但し、年俸が上がることにより、生え抜きの選手が移籍せざるを得なくなると、チームが選手の育成を怠ったり、ファンがチームに愛着を持てなくなる等の弊害が懸念されることから、各種の例外事項が設けられ、サラリーキャップを超えた額での契約が可能となっています。このようなサラリーキャップの方式をソフトキャップと呼びます。
NBAのサラリーキャップは毎年のバスケットボール関連収支(BRI)の予想額を基に算出され、現在は利益の57%以上と言う決まりがあります。ゲームではナビゲーションメニューから、General Manager → Team Budgetでサラリーキャップの具体的な額を確認できるようになっています。実際のNBAではリーグ収支に従い上下に変動するはずですが、ゲームでは年数が進むにつれて一定の率で上がって行くように設定されています。
NBAではサラリーキャップが存在する一方で、チーム最低給料総額も設定されており、これはサラリーキャップの75%と定められています。これは低い順位のチームがドラフトで早い指名順位を得て有望な選手を獲得し、他チームに高く売り飛ばすと言った行為を抑制すると言う意図が含まれています。但し、確率に差は付けられているものの、NBAのドラフト順はロッタリー制と呼ばれる抽選を含む方式で決められるため、単純にこういった行為が行えるものではありません。
サラリー総額が当該年度の給料敷居値を越えることによってリーグに支払わなければならなくなる、一種の罰金を通称、ラグジュアリータックス(贅沢税)といいます。リーグのバスケットボール関連収入の総合計値(BRI)をチーム数で割ったものの61.1%が基準額となり、年々増加して行いきます。徴収した贅沢税はリーグの運営費等が差し引かれた後、基準額を超えていないチームに均等分配れます。
シーズン | サラリーキャップ | ミニマムサラリー | タックス基準額 |
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2005-06 | $49,500,000 | $37,125,000 | $61,700,000 |
2006-07 | $53,135,000 | $39,851,250 | $65,420,000 |
2007-08 | $55,630,000 | $41,722,500 | $67,865,000 |
2008-09 | $58,680,000 | $44,010,000 | $71,150,000 |
2009-10 | $57,700,000 | $43,275,000 | $69,920,000 |
NBAではチームだけではなく、選手個々の年俸についても細かな制限があります。フリーエージェント等に絡む様々な例外的な条項が設けられているため、一概には言えませんが、概ねリーグに所属した年数によって最低補償額(設定金額)、上限額(サラリーキャップ比、もしくは設定金額のどちらか)ともに上がって行く仕組みになっています。合わせて年毎の給料の上昇率についても関連した細かな制限があります。また、ドラフト1順目で指名された選手についても、契約額の吊り上げを防ぐための厳しい規定が設けられています。
CBAの規定に定められた最高限度額での契約のことを「MAX契約」といいます。MAX契約の額は対象となる選手のリーグ在籍年数によって異なります。
CBAの規定に定められた最低保障額での契約のことを「ミニマム契約」といいます。契約の額は対象となる選手のリーグ在籍年数によって異なります。
経験年数 | 最低保障額 | 最高額 |
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0年 | $458k | @$9,000M Aサラリーキャップの25% のいずれかの最高額 B前年度の年俸の105% |
1年 | $736k | |
2年 | $825k | |
3年 | $855k | |
4年 | $885k | |
5年 | $959k | |
6年 | $1.033M | |
7年 | $1.108M | @$11,000M Aサラリーキャップの30% のいずれかの最高額 B前年度の年俸の105% |
8年 | $1.182M | |
9年 | $1.188M | |
10年以上 | $1.306M | @$14,000M Aサラリーキャップの35% のいずれかの最高額 B前年度の年俸の105% |
新たな複数年契約を結ぶ場合、サラリーキャップは初年度のサラリーで計算されます。2年目以降の昇給はその選手の例外事項の使用や契約内容により昇給率に限度が出てきます。
CBAではルーキーの契約額の高騰を防ぐため、指名順位に応じて基準額を細かく規定していますが、チームはプレーヤーと規定額の80%〜120%の間で契約することが可能です。実際には多くの場合、契約は最大値である120%で行われます。これがサラリーキャップを超える場合でも、チームはルーキー例外条項を使用することでこの契約を実施することができます。
ドラフト1順目で指名された選手はCBAにより自動的に2年契約が保証され、更にチームオプション2年が付きます。同時に指名順位によってサラリーの基準額(ルーキーサラリースケール)が決定します。3年目と4年目(オプション)の増額のパーセンテージは選手のドラフト指名順位で異なります。
チームはルーキー契約した選手の2シーズン目の開幕前の10月31日までに3シーズン目のチームオプション権を行使しするか決定しなければなりません。同様にチームは選手の3シーズン目の前の10月31日まで4シーズン目のオプション権を行使するか決めなければなりません。
2順目で指名された選手には契約の保障はつきません。ほとんどの場合、ミニマム契約となり、これまたほとんどの場合、最長の2年契約を得られる事は無く、1年+チームオプションで契約されます。
ドラフトで指名されなかった新人選手はフリーエージェント扱いとなります。契約の最長は2年となります。
ドラフト1巡目で指名された選手は、3シーズン目終了後の10月31日までに、所属チームとの契約を延長することができます。この際の契約は最大5年(ルーキー契約の4年目も入れると計6年)で、MAX契約が可能です。
4年以上の契約を結んでいるベテラン選手は、現在の契約を延長する際に、現契約の契約最終年度額から最大で10.5%アップされた金額で再契約することができます。この場合、現契約が4、あるいは5年契約の場合、3年目まで契約が満了しないと延長契約を結ぶことはできず、現契約が6、あるいは7年契約の場合は4年目までの契約が満了しないと延長契約を結ぶことはできません。
ドラフト1巡目指名の選手がオプションを含めた4年契約を満了した際に、所属チームが行うことのできる1年契約のオファーです。このオファーを受けた選手は制限付きFAとなります。チームは契約満了後、6月30日までに選手に対してこのオファーを行うかを決めなければなりません。
オファー額はドラフト1巡目選手はルーキーサラリースケールの通りで、それ以外の選手は前年度の給料の125%、あるいはミニマムサラリー+17.5万ドルのいずれか高い方と決められています。
その名の通り、10日間だけ有効の契約です。シーズン中、1月5日の時点でどこのチームとも契約していない選手に対して、各チームは1選手につき2回までこのルールを利用して契約を行うことができます。それ以降チームがその選手を必要として契約を延長する場合には、シーズン最後までの契約を結ばなければなりません。
通常の契約満了時に、更に(1年)契約を継続するか、打ち切るかを選ぶことができる権利。チームが持つ場合(チームオプション)と選手側が持つ場合(プレーヤーオプション)と2通りあります。
5年以上の契約を結んだ選手が、契約満了を待たずに自らの意思で契約を解除してFAになることができる権利で、略してETOを呼ばれることもあります。このオプションは契約後、4年以上経過しないと行使することができず、且つ、行使する場合には6月30日までに意思表明しなければなりません。
選手が契約を交わしたチームからトレードで他のチームへ移籍させられた場合に、新たに獲得したチームがサラリーを一定量上乗せして払わなければならないとする特殊オプション。増額量は契約選手ごとに異なる。
通常、チームは所属している選手のトレードを自由に行う事ができますが、このオプションを持つ選手は選手自身の合意が無い限りトレードする事ができません。実際のNBAでは現役選手としては唯一コービー・ブライアントがこの権利を有していると言われています。
通常チームの総年俸額がサラリーキャップをオーバーするような契約はできませんが、いくつかの例外条項(エクセプション)を利用することで、フリーエージェント(FA)選手との契約が可能となります(このような例外を用いてオーバーすることのできるサラリーキャップをソフトキャップと呼びます)。これらの例外条項は1選手に対して1つしか適用する事ができません。
各例外条項が認めているのは「サラリーキャップを超えていても契約ができる」ということであって、「サラリーに計上されない」ということではありません。一部の例外を除き全てのサラリーは計上され、タックス基準額をオーバーした分は贅沢税の対象となります。
この例外条項はCBAに記載されるベテラン・フリーエージェント例外の一部です。この条項を利用して最初に契約を結んだのが、たまたまラリー・バードであったため、以降、「バード例外条項」と呼ばれるようになりました。
この条項はFAとして放棄されず、また、チームを変更せずに同チームに3年以上在籍した選手が所属チームと再契約する場合に限りサラリーキャップを超えても最高限度額までの契約が可能となるというものです。この場合、どのような組み合わせで3年を経過しても構いません。例えば1年契約を3回続けても良いわけです。
また、選手がトレードされた場合、この権利も一緒に移動し、新しいチームで再契約する際にこの条項を利用することができます。
この例外条項を使用して契約する場合、契約年数は最長で6年、年毎の昇給限度は10.5%となります。
これは、バード例外条項よりいくらか弱い権利で、CBAに記載されるベテラン・フリーエージェント例外の一部です。
この条項はFAとして放棄されず、また、チームを変更せずに同チームに2年以上在籍した選手が所属チームと再契約する場合に、サラリーキャップを超えてもその選手の前年度の給料の175%、あるいは前年度の平均サラリーのどちらか高い方で契約できるというものです。この際の契約は2年以上結ばなければなりません。契約年数は最長で6年、年毎の昇給限度は10.5%となります。
この条項は、バード例外条項、アーリーバード例外条項のどちらにも該当しないFA選手に対して、その選手の所属チームがサラリーキャップを超えていても、その選手の前年度の給料の120%、または、そのシーズンの最低保障サラリーの120%、あるいはクオリファイングオファー額のいずれかのうち、一番高い額で契約できるというものです。
サラリーキャップに制限されず、平均サラリー同等額まで選手と契約することができる例外条項です。この金額までならば複数の選手と契約することも可能です。この例外条項は毎年使用が可能です。契約年数は最長で5年で、昇給限度は8%です。この契約を使って契約した選手をサイン&トレードで放出することはできません。
ミニマム・プレーヤー・サラリー例外条項はサラリーキャップに制限されずに、最低保障給料で選手と契約できるという例外条項です。最低保障給料の選手をトレードで獲得する際にも適用されます。 契約年数は最長2年です。
条項に定められた限度額までであれば、サラリーキャップを超えていてもFA選手と契約できるという例外条項で、以前は限度額を基に100万ドル例外条項と呼ばれていましたが、金額が毎年変化するため現在の名称に変更されました。この条項は上限額以内であれば複数の選手との契約に使用することが可能ですが、現行のCBA内で3回までしか使用できず、且つ、2年続けて使うことができないという決まりがあります。この条項を使用しての契約は最長2年、年毎の昇給限度は8%です。
ドラフト1巡目指名された選手と契約する場合、サラリーキャップを超えていても、対象選手のサラリーがルーキーサラリー基準額の120%以内であれば契約可能とする条項です。
サラリーキャップを超えているチームがトレードを行う場合に獲得する選手の合計年俸が、放出する選手の合計年俸の125%+10万ドル以内であればそのトレードを認めるという条項です。
この例外条項はケガ(あるいは死亡)により、選手がシーズンに参加できなくなる事態が発生した場合にチームを救済するために定められたもので、1名の選手に対してしか使用できません。また、この条項を使用するにはリーグ指定の医師の診断書が必要になります。
この条項を使って代替選手と契約する場合には、サラリーキャップを超えても、ケガで全休する選手の年俸の50%、あるいは前年度のリーグの平均サラリーの108%までの金額で契約することができますが、7月1日〜11月30日の間に以降のシーズンが全休となると予想された場合には45日以内、12月1日〜6月30日の間に翌シーズンの全休が見込まれた場合には10月1日までに契約申請しなくてはなりません。
シーズン | サラリーキャップ | ミッドレベルサラリー | バイアニュアル |
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2005-06 | $49,500,000 | $5,000,000 | $1,670,000 |
2006-07 | $53,135,000 | $5,215,000 | $1,750,000 |
2007-08 | $55,630,000 | $5,356,000 | $1,830,000 |
2008-09 | $58,680,000 | $5,585,000 | $1,910,000 |
2009-10 | $57,700,000 | $5,854,000 | $1,990,000 |
契約種別 | 最長契約年数 | 最大上昇率 |
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バード例外 | 6年 | 10.5% |
アーリーバード例外 | 5年 | 10.5% |
ドラフト1巡目指名 | 2年+2年のチームオプション | ルーキーサラリースケールの通り |
制限付きFA | 5年 | 実質的に増加します。 |
延長契約 | 残り契約含め6年 | 延長される前シーズンの給料の10.5% |
その他 | 5年 | 8% |